神無月は忙しくて・・・秋祭り篇

宮司です。表題の如く神無月は忙しくてようやく間が空きましたので今月のご報告です。
10月に入りますと各地の神社で秋祭りが催されます。6日、7日は大沢野の猪谷地域の祭礼で五社に出向きました。此の地域独特の「湯釜神事」がありましてこれが面白いんです。
祭礼前に境内にある竈に湯を沸かし、麻緒と紙垂を竹で垂らしておきます。
神社での祭典が終わりましたら笹葉を結わえた物に祓え詞を唱えて煮え立った湯に笹葉を浸して参列者に振りかけます。当然、熱いです。熱いですが参列者の宮総代、おじいさん、おばあさんも熱い湯が来ることを覚悟して両手を併せて潔く熱湯のお祓いを受けられます。その後、釜の上に垂らしていた紙垂を各自1枚ずつちぎり取り、熱湯の釜に浸してから自分の躰に擦り付けます。躰の都合が悪いところを念入りに撫でつけてから、この紙垂を境内の御神木に投げつけて、樹皮にピタッと張り付いたら災厄が祓われる、という神事です。なかなか樹皮に紙が付かないので最近では樹皮の隙間にねじ込んで居られます。大祓神事の人形の撫で祓いの要領ですね。古事記・日本書紀には「盟神探湯(くがたち)」という熱湯の湯釜に両手を入れて嘘偽りの潔白を証明する事が書かれていたり、湯立て神楽など五穀豊穣、無病息災を祈る神事が多く残っています。
この東猪谷地区の神事は行者が伝えた事だと言われています。
他にも本社とは別に「秋葉神社」が祭られていたり、太子堂があったり、此の地域ならではの土着の信仰があり興味深い所で、私は好きです。