歌会始の儀に触れて。

禰宜です、風邪ひきました。最悪です。やはり健康が一番ですね、息が難なく吸えて難なくはくことが出来る、この単純な繰り返しを出来ることが一番ですよ。のどが痛いので唾を飲み込むごとに苦痛を伴い、咳こむごとに筋肉と気が滅入る日々です。健康って有り難いもんですね、風邪引いただけでそう思いますから、色々な病気を煩っていらっしゃる方の精神修行はすごいものだと思います。普段の不平不満など取るに足らない物ですね、健康に暮らせれば。と、いうことでふらふらしながらも仕事を進めなければ行けませんので所用で銀行にいった待ち時間、テレビで毎年恒例の宮中での「歌会始の儀」が放送されていました。待ち時間の間、これは良かったと思い、モニターの最前列に座って見ましたら丁度、皇后陛下の御歌の場面でした。

皇后陛下

み遷(うつ)りの 近き宮居に仕ふると 瞳静かに娘(こ)は言ひて発(た)つ

平成26年1月16日産経新聞より

今年のお題は「静」ということで、式年遷宮に臨時神宮祭主をお仕えされた黒田清子様から伊勢へ向かう前にご挨拶をお受けになられました時のお心をお読みになりましたこの御歌がぐさっと心に突き刺さりました。靖国神社の御英霊の「言の葉」に掲載されていた、特攻隊で出で立つ前の一時帰郷の息子の様子を母親が綴った文となぜか被ってしまったからです。その文章の大意は、いつもは帰省するときは帰るという連絡があるのに急に暇が出来た、と帰省した息子は静かに普段と何も変わらない様子で数日を過ごし、旅立っていってそのまま帰ってこない、という内容の文章でした。

神宮の式年遷宮という国家の最も重要な祭祀に臨時祭主としてお仕えになる我が娘の瞳に重大な決意と落ち着きを感じられた事が御歌となっているのですが、その裏には大変ご心配されているご様子が感じられます。それと静かな目でご挨拶をされた黒田清子様も多分に不安なお気持ちを心に秘めながらも余計な心配を親に掛けたくない、というお心の表れでは無いかと思うのです、静かな瞳は。そんな母娘の心情が伝わる本当にすばらしい、良いお歌だと思います。本当にたまらんですな、こういった御歌に触れると。

それとこれは勝手に私が想ってしまったことですので皇后陛下のお心は別でしょうが、古代の神宮祭主である「斎王」はやはり皇女様がお勤めになったのですが、斎王、斎宮(いつきのみや)として皇女様がお勤めになるということは古代では今生の別れを意味しました。昔であればこれで会えないかも知れない親子の場面での神つかえに出で立つ娘が愛おしく感じられる母性を感じられたように私が勝手に想ってしましましたので心に突き刺さりました、すみません。ですが、お陰で体調不良ながらもシャンとする心意気を戴きました。有り難うございました。