お久しぶりです、禰宜です。以前にも書きましたが、当社にはおがたまの木が二本あります。いずれも御敬神熱心な新庄の氏子様から奉納されたものです。おがたまの木というのは神社にとって非常にゆかりのある木であります。その名前が示すとおりに、神様の御神霊をお招きする木ということで、今現在、地鎮祭などの神様をお招きする祭祀の時は神籬(ひもろぎ)ともうしまして榊の枝を使うことが多いのですが、その昔、榊が自生していない地区は、このおがたまの木が神宿るご神木であったのでしょうか。この木の枝は天に向かって真っ直ぐに伸びていこうとする枝っぷりなんですね、ですから神霊が降りてこられる木であるという由来はそこから来ているともいわれているようです。
ちなみに「ひもろぎ」の語源は「霊(ひ)」が天降(くだ)ることを古語で「あもる」と読みますので、「御神霊が天降りされる木」が「ひもろぎ」の表す意味となります。
もうひとつ、古事記・日本書紀に語られる天の岩戸開きで、あめのうづめの命が手に持ち神楽を踊ったとされる捕り物は、古事記では「天の香具山の笹葉」、日本書紀では「茅を巻いた矛」とありますが、このおがたまのきであるという説もあります。由来の出元が私自身わからないのですが、日本神話のふるさと、宮崎県高千穂町が町の木とされていますのでご当地に何か由来があるのではと感じています。
そしてこのおがたまの木は、神楽鈴、一円玉の木のデザインに似ているという共通点があります。実際の処一円玉のデザインは実在する木をモデルにしたわけでは無いそうですが、実は微妙に似ています。天に向かって真っ直ぐ伸びていく枝の形や、花のつぼみ、葉の形などそっくりです。「鈴生り」って言葉がありますが、これも神楽鈴からきた言葉らしく、神楽鈴の意匠はおがたまの花が咲いている様を現しているそうです。神楽鈴は「鈴なり」(豊作)、一円玉の円は「丸くおさまる」(円満)に繋がりますので、興味深いおはなしですね。