わしじゃ、神使いの鷹じゃ。久しいのう。たっしゃにしておられたか。
4月に入るとカラスが繁殖期にはいるので、なにやらあちこちで悪さを働くようじゃ。あやつらも一生懸命生きているのじゃから悪気は無いのかもしれんが、どうもえげつないんじゃ。手水舎に水を貯めておくと、奴ら、罰当たりにもお参りの方々が心を清める水で自らが禊ぎ(みそぎ:心身の汚れを祓い清めるために海や川に入って身を濯ぐ神事。)をしよるのじゃ、たわけものが。常願寺川でやれっちゅうんじゃ、よそいってみそぎせい。禊ぎだけに留まらずに餌をわざわざ運んできてここで洗ってみたり、それはそれはここでは書けないようなあんなこんな悪さをしよるさかいに、禰宜も苦労しておったわ。カラス除けをかけてみたりネットを張ろうともしたが、まぁ、相手が悪いわ。カラスの方が一枚も二枚も上手じゃ。かえって参拝者に悪いイメージを与えるので、禰宜はカラスに逆らうのはやめたようじゃ。そのかわり、申し訳ないが龍神さまはしばらくお休みを取って貰うことに毎年しておるのじゃ、どうか参拝者の皆の衆、ご理解を願いたい。わしからもお願いじゃ。春祭りの19日は人が多く賑わうのであやつらは近づけないので龍神さまの御封印は解禁しますぞ。そういえば先日、水を止めて二日後にはカラスが手水舎の柱に二羽たたずんでおって、水が枯れた手水舎をさみしそうに眺めておったわ。先手必勝、功を奏したな、禰宜どの。